村上春樹氏が雑誌ポパイに連載したTシャツのエッセイを書籍にまとめたもの。ウィスキー、ビール、レコード、マラソン大会、車、村上春樹氏の書籍の販促用のものなどなど。こんなTシャツがあるのかとTシャツそのものに驚くと同時に、例えば1998年のニューヨークマラソンを始め多くのマラソン大会に出てたのかと活動の幅の広さにも驚かされます。
また手に取る前は絶対にソフトカバーだと思っていたら、ハードカバーでした。本扉では本のタイトルと著者名の配置がT字になっているなど、Tシャツ愛にあふれているように思えます。
この本の存在はAirTグループに投稿されたのをみて知りました。確か出たばかりの頃で、さっそく購入して読んでみたんですよ。途中32ページくらいまで読んだところで思ったのは、住む世界が違うということ(苦笑)。ハワイに住んでた時に買ったTシャツ、ニューヨークマラソンに出場した時の記念Tシャツなど、文字通り住む世界が違うことを目の当たりにして諦めのような感覚が身体中を巡ったのです。そして、そのような着られないTシャツや読まない本や聞かないレコードを保管していても捨てない度量(あるいは、部屋数?)を著者が持っていることに気づいたあたりで、諦めの感覚が加速しました。そのような感覚に苛まれたために、読了後今まで書けずにいました。
架空のTシャツAirTを思いついた時に、誰でも自慢のTシャツの一つや二つ持っているだろうと思い、リアルな自慢のTシャツを紹介するのも面白いなと思ったんですよ。この本を見てしまうと気圧され気味になってしまうのも事実ですが、AirTもそのような企画に取り組みたいです。だって、自慢のTシャツを披露して面白いのは披露する人が有名人だからとは限らず、都築響一編集本「捨てられないTシャツ」の例を見ても面白いに違いないから!
恥ずかしながら、私は著者の作品を全く読んだことがありません(唯一持っているのは、回文本「またたび浴びたタマ」)。という人なので、「トニー滝谷」という短編小説のことは知りませんでした。その原点は、本体表紙も飾っている以下のTシャツとのこと。
マウイ島で1ドルで買ったTシャツのフロントに書かれている名前を見て、どんな人なのだろうと想像力を膨らませて『彼』を主人公にして小説を書いたそうですが、それが人生において最良の投資だという記述(まえがきにあり)に勇気付けられました。架空のTシャツAirTにもそんなポテンシャルが秘められているかもしれません。
余談ですが、『Tシャツ 本』でググってみたら、小説の装丁デザインをプリントしたTシャツを紹介しているページを見つけました。いずれもアメリカ古典文学にちなんでいて、このページを投稿された方のお名前が村上さんなのですが、これは偶然なのでしょうか…
https://www.zutto.co.jp/blog/category/howtouse/370
AirT呼びかけ人
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