ヴァージル・アブロー「”複雑なタイトルをここに”」で、またまた出てきた”レディメイド”

この書籍は、ハーバード大学デザイン大学院で2017年10月26日に行われたヴァージル・アブローの特別講義をまとめたもの。ちなみに、「The Incidents」は1936年から続く同大学院でのイベントの出版物シリーズの名称らしい。

ヴァージル・アブローの名前を知ったのは、ルイヴィトンのメンズウェアのクリエイティブディレクターに就任したという記事か何かで。建築を学びながらTシャツをデザインしていたなど知るものの、後回しになってました。が、後藤繁雄さんのスーパースクール・オンラインA&Eにてこの書籍を知り、コピーの途中でコピー機の蓋を開けてしまった感じの書籍デザインがかっこいいなと思い、図書館で借りました。

レディメイド

で、冒頭でデュシャンが出てきたんですよ。あーデュシャンなのかーと(意味不明ですみません)。それは、PERSONAL DESIGN LANGUAGEと題して7つの考え方(ショートカットとも言っていた)をプレゼンするのだけど、その一つ目がデュシャンのレディメイドなんですね。

いろんな人が言ってますが、『新しい何かを生み出すことは不可能、過去から現在に至る積み重ねの上にデザイナーやアーティストは成り立っている』。そして、なるほどと思ったのは、『同時代的な集団としてひとつの方向に少しずつ歩んでいる』、というところ。私なりに解釈すると、お互いにその存在すら知らない作家たちがあちこちで過去の何かに基づいた何かを作ったとして、それを俯瞰的に見た場合にある方向に進んで行くクラスターとして認識できるのではないかということ、なのですが。こういう考え方が面白いです。

引用

アブローが多用するクォーテーションマーク。曰く、その役目は『ユーモア』で、『会話に人間味を加えるツール』、『二面性を同時に持たせることができて抽象的であると同時に具体的にピンポイントで何かを表現することもできる』。そして大きく頷いたのは『キーボードだけでデザインできる』ところ。

ところで、クォーテーションマークって英米人がよくジェスチャーで使いますよね(どうもエアクオートというらしい)。皮肉っぽく言いたい時とか。会話の中のジェスチャーよりも、視覚の中に現れるクォーテーションマークは面白いですけど。

3%アプローチ

上述のレディメイド、引用とも通じるのだけど、何かを作る時には『原型の3%をエディットするということしかしない』とのこと。ナイキの新しいエアフォース1を作ってくれと頼まれた時のことを言及してまして、実際にものを見ると、なるほどねーと思いました。


上記3つ以外には、『明らかな類似あるいは相違という二つの見解を折衷する』、『ワークインプログレス』、『何を作るにせよ存在理由が必要』、『ツーリストとピューリストがどこかで出会う』など語っていて、最後のが同意でした。私なりの解釈ですが、自分とは違うものとの出会いとか。

で、最後に紹介したいのが以下の記事で引用されているオレンジ色のTシャツ。
https://www.highsnobiety.com/p/virgil-abloh-off-white-quotation-marks/
今まで知りませんでした。私が上述した「引用」の箇所に記されている通り『具体的にピンポイントで表現』してますよね。アイ・ウェイウェイのインスタレーション(実際に難民が使ったライフジャケットを用いたインスタレーション)を思い出しました。アブローの考え方に基づけば、詩の引用(以下の4枚目のバックプリントのアップを見ると誰の引用かを記載していることがわかる)、色の選び方、そして今存在すべき理由などが見えてくるけど、そういうアプローチ以前に直球で刺さりますよね。

日本の発行元アダチプレスの書籍ページに講演のYouTube動画がありました。
https://adachipress.jp/insertcomplicatedtitlehere/

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